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その者達は以前衛門三郎に年貢の納めが少ないと言って村を追放された者で、衛門三郎も「すまなんだ、すまなんだ」と己の蒔いた種だと、ひたすら謝るだけでした。それからの衛門三郎は以前にもましてひたすら自分に厳しく遍路を続けて行きました。
やがて八年の月日が流れ四国霊場を20回廻った時「しかし未だに空海上人に会えない、ならば今度は逆に廻ってみよう」そう思った衛門三郎は徳島県切幡寺から逆に廻り始め、やがて故郷の近くにやって来た時「そうだ、妻は達者でやっているだろうか?」丁度お茶の接待を受けている時八塚の方から煙が見え「おばあさん、あの煙は?」と聞くとおばあさんは衛門三郎の話を始め「あれは残された奥さんの野辺送りの煙ですよ。奥さんは子供の供養を行いながら夫の帰りを待って居ったが、何時までも帰らぬ夫を心配するあまり、病に倒れ今朝息を引き取られたそうじゃ。」その夜衛門三郎は妻の墓に行き、一晩中妻に語りかけ泣き明かしたそうです。その後も黙々と遍路を続けている内にとうとう病に掛り、動けなく成りました。「ここは何処だろう?まだ空海上人にも会っていない、こんな所で死ななければいけないのだろうか?」衛門三郎は嘆き悲しみました。すると何処からか「三郎、三郎」と呼ぶ声が聞こえて来ました。