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その裁判に必要な期間は四十九日。法事でおなじみの日数で、その間のことを冥途の旅≠ニいい表している。ちなみに冥途≠ニは、冥土≠ニも書くが、要するにこの冥界は死者が住みつく場所ではなく、ただそこを通過するだけの土地であるために、冥途≠ニいう書き方のほうがふさわしい。ともあれ、この冥途の旅≠ヘ、山路から始まる。山路とは、大きな山の裾野の道だ。この山は死者が冥途へ旅立つにあたってその出発点となる山であるところから、「死出の山」と名づけられている。この「死出の山」は長さが八〇〇里(約三二〇〇キロ)、高さは不明。いずれにしても峻険な山脈であり、これを七日間にわたって、星の光だけを頼りに死者はとぼとぼと一人で歩いていくことになる。
さて、死者は、この冥途の旅の間、すなわち中陰の期間はどのような姿をしているのか?死者はきわめて微細な体をしており、人間の目には見えない。そして、香を食物としている。そこから彼らを食香≠ニ呼び、仏壇には彼ら死者のためにお線香を絶やしてはならないという根拠になっている。いくら微細な 存在であるとはいえ、食物であるお線香がなければ空腹で困ってしまうからだ。死者はこうして死出の山をスタートし、 山路をとぼとぼと歩いているうちに、七日間がすぎる。そして、来世の行き先を裁く最初の裁判官・秦広王の法廷に立たされることになる。以下、都合七日間ごとに七回の裁きを受けるわけだが、これについてはあとでまとめて説明することにしたい。